「回復期」と聞くと、リハビリを受けて元の生活に近づいていく穏やかな時間を思い浮かべるかもしれません。けれど、急性心筋梗塞で倒れた夫が迎えた回復期は、そんな想像とはまったく違う現実でした。

  • 面会制限の中でどうつながるか
  • 口から食べる力を失っていく悔しさ
  • 体が固まっていく現実
  • 退院に向けた準備と制度の手続き

この記事では、150日間の回復期リハビリ入院を家族としてどう支えたのかを、実体験に基づいてお伝えします。

同じような状況にあるご家族の心の準備や判断の助けになれば嬉しいです。

この記事でわかること

  • 面会制限の中で家族がつながり続けるための工夫
  • 食べる力の喪失とリハビリのもどかしさ
  • 体が固まっていく拘縮の現実と家族の葛藤
  • 障害年金・身体障害者手帳の申請準備と注意点
  • 退院前の自宅訪問と在宅介護への備え

面会制限の中でつながり続けるための工夫

回復期病院でも、コロナ対策の影響で直接面会は叶わず、タブレットでのリモート面会が中心でした。限られた予約枠の中で、家族として何ができるかを模索し続ける日々。

そんな中、リハビリ職の方々のご配慮で「窓越し面会」が叶ったことは心に残る出来事でした。声が届かないため、携帯電話を2台用意し、一台で通話しながら窓越しに顔を合わせました。子どもたちが手を振ったり話しかけたりする姿に、夫の表情も柔らかくなったのを覚えています。

直接触れ合えなくても、つながっている実感を工夫しながら作り出すことは、回復への小さな力になっていたと思います。

面会制限中に家族が工夫したこと:

  • タブレットのリモート面会で毎日顔を見せる
  • 子どもたちの声を録音して再生する
  • 携帯電話2台を使った窓越し面会
  • 夫の好きだった音楽をヘッドホンで流す

食べる力の喪失とリハビリのもどかしさ

急性期病院ではゼリーやお水を口から摂れていた夫が、一般病棟での待機中に経口摂取が中止となり、「胃ろうのみ」の食事に変わりました。

回復期病院に入ったとき、すでに飲み込む力は著しく低下していました。担当のST(言語聴覚士)さんからは「お楽しみ程度の経口摂取も難しいかもしれない」と伝えられ、悔しさと無念さがこみ上げました。

入院中のリハビリ内容:

職種リハビリ内容
理学療法士(PT)歩行訓練・立位訓練
作業療法士(OT)手先の動きの訓練・日常生活動作(ADL)の維持
言語聴覚士(ST)嚥下訓練(飲み込む力のトレーニング)

毎日リハビリはありましたが、筋力や柔軟性の低下は避けがたく、体が変わっていく現実に直面しながら、家族として何もできない悔しさと向き合う日々が続きました。

「声を出す」「うなずく」|小さな変化を見逃さず喜ぶ

入院から1ヶ月ほど経ったある日、歩行訓練の際に夫がかすかに声を出したことを、担当のPTさんから教えていただきました。

「歩くことと、声を出すことはつながっているんですよ」という言葉に、もしかするとこのまま話し始めてくれるかもしれない——そんな期待がよぎりました。

その後、声を出すことはありませんでした。

それでも、急性期には首がぐったりと下がり自分で支えることすら難しかった夫が、うなずきや首振りで「はい」「いいえ」を意思表示できるようになりました。家族だけでなく、リハビリスタッフや看護師さんに対しても反応を示せるようになったことは、本人にとっても大きな意味があったはずです。

食べる力は失われてしまいましたが、「伝える力」が少しずつ育まれていく姿を見られたことは、回復期リハビリならではの希望でした。

体が固まっていく現実と家族の葛藤

時間が経つにつれ、夫の体はどんどん固くなり、担当スタッフからは「丸太の棒のよう」と表現されるほどになりました。かかとは床につかず、両足はそれぞれ異なる方向に固まってしまいました。

面会できない中で体が変化していく姿を知り、食べる力を失い、動きも減っていく現実に、がっかりした気持ちと無力感を覚えていました。

もし面会制限がなければ——そんな思いが頭をよぎることもありましたが、コロナ禍という状況の中でできる限りの工夫をするしかありませんでした。経済的な不安を軽減できたことで、家族としての精神的な余裕にもつながったように思います。

障害年金・身体障害者手帳の申請準備

回復期入院中に「症状固定」の診断が出たことで、障害年金と身体障害者手帳の手続きを進めることができました。

スケジュール管理が重要:

障害年金の診断書は、依頼してから受け取るまでに約2ヶ月かかりました。身体障害者手帳の診断書も同時に依頼し、同じく2ヶ月ほどかかりました。

できるだけ早く進めたかったため、診断書を依頼したタイミングで1ヶ月後に年金事務所の予約を入れていましたが、書類の準備が間に合わずやむなくキャンセル。再び2ヶ月後に予約を取り直しました。

申請準備のポイント:

  • 年金事務所は原則予約制。診断書の完成見込みを確認してから予約を入れる
  • 病院の窓口や相談員さんに「診断書がいつ仕上がるか」を確認しながらスケジュールを組む
  • 身体障害者手帳の申請は市役所で行い、予約なしで申請できた

身体障害者手帳取得後に広がった支援:

手帳取得が「配偶者の障害によるひとり親認定」へとつながり、子育てや生活支援の面でも助けられました。また、障害年金と傷病手当金が一時的に重複し、支給調整や返金手続きが必要になる場面もありましたが、経済的な不安を軽減できたことで精神的な余裕にもつながりました。

障害年金の申請体験については別記事でまとめています。

退院前の自宅訪問と在宅介護への備え

退院が近づくと、担当のPT・OTさんが夫と一緒に自宅を訪問してくださいました。段差や移動動線、手すりの位置、ベッドの配置など細やかな点まで確認し、アドバイスをいただきました。

訪問は2回。8ヶ月ぶりの自宅には、夫も涙を流していました。

実際に夫を車椅子に乗せた状態でエントランスから玄関、室内の動線を確認することで、退院後の日常生活でどこに負担がかかるかが明確になりました。実際に動いてみることで初めて気づくことも多く、在宅介護を視野に入れるうえでとても大切な準備でした。

退院前後のトラブル:

当初は在宅介護での退院を予定していましたが、小学校の入学式と日程が重なり、ケアマネさんに相談してレスパイト入院で一時的に近隣病院へお願いすることになりました。

ところが、たった数日の間に褥瘡ができてしまいました。リハビリ指示が出せなかったことが原因とのこと。15分の直接面会ができたのですが、夫は話せず、こちらも褥瘡に気づくことができませんでした。

在宅介護への道は決して平坦ではありませんでした。

回復期入院中に家族ができたことチェックリスト

【面会・コミュニケーション】

✅ タブレットでのリモート面会を毎日予約する

✅ 子どもたちの声を録音して届ける

✅ スタッフにお願いして窓越し面会などの工夫を相談する

✅ リハビリの進捗をスタッフから定期的に共有してもらう

【身体ケア】

✅ 拘縮の兆候を看護師・スタッフに定期確認する

✅ 面会できる場合は手足をさすって刺激を与える

✅ 嚥下訓練の状況をSTさんから定期的に確認する

【制度・申請準備】

✅ 症状固定の診断が出たら障害年金・身体障害者手帳の準備を始める

✅ 診断書の完成時期を確認してから年金事務所の予約を入れる

✅ 傷病手当金と障害年金の重複期間・返金の可能性を把握しておく

【退院準備】

✅ PT・OTによる自宅訪問を依頼して環境整備のアドバイスをもらう

✅ レスパイト入院を利用する場合、リハビリ継続の可否を事前に確認する

✅ 褥瘡予防のためのポジショニングについてスタッフに確認しておく

さいごに

回復期病院での150日間は、「元気を取り戻していく穏やかな時間」ではありませんでした。

  • 回復の希望と、進まない現実
  • 面会制限の中での心のつながり
  • 食べる力や身体機能の維持がいかに難しいか
  • 手続きや退院準備のために家族ができるサポートの限界

それでも、「立つ」「声を出す」「うなずく」という小さな回復を、私たちは確かに感じ取っていました。

「声を出す」「うなずく」という変化を見逃さず、回復を信じて支え続けた日々が、少しずつ希望をつないでくれたように感じます。

この体験が、今まさに回復期を支えているご家族のヒントになれば幸いです。

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