夫が病気で寝たきりになり、胃ろうだけの生活になってから、口から食べることは完全に諦めていました。

胃ろうで栄養と水分を補給できることは、命を守るうえでとても大切なことです。それはわかっています。でも、口から何も食べられない生活は、想像以上につらいものでした。夫の表情から、だんだん笑顔が消えていきました。

そんなある夏の日、夫が私にこう言いました。

「水が飲みたい」

胃ろうで水分は摂れていても、口の中の渇きは解消されません。その日は特に暑く、夫のその一言が、私の胸に深く刺さりました。

ずっと、もう一度口から食べさせてあげたいと思っていました。でも、誤嚥させてしまうのではないか、寿命を縮めてしまうのではないかという不安が大きく、踏み出せずにいました。

この一言が、私を本気で動かすきっかけになりました。

この記事では、胃ろう生活から「嚥下評価入院」を経て、口から食べる喜びを少しずつ取り戻した実体験をまとめています。

※夫の状態:要介護4・胃ろう・全介助・重度四肢麻痺・身体障害者手帳1級・失語症あり。現在は医療・介護スタッフの方々に支えていただきながら生活しています。医療的にも生活面でも介助量が多く、「口から食べることは難しい」と言われやすい状態でした。

嚥下評価入院を決意するまでの経緯

在宅介護の頃、訪問医に紹介してもらった訪問歯科の先生に、経鼻内視鏡で嚥下評価をしてもらったことがあります。そのときの診断は、「ポタージュ状なら再度経口摂取可能」というものでした。

訪問言語聴覚士さんにも来てもらい、自宅で経口摂取の訓練を始めましたが、別の病気で緊急入院となり、訓練は中断。結果的に、約10か月間、夫は口から食べることができない生活を送りました。

その間も、マウスピュア 口腔ケアジェルと吸引歯ブラシで口腔ケアは続けていました。オレンジ風味やコーヒー風味のジェルを舌の上で味わうと、夫は少しだけ笑顔を見せてくれました。でも、それは「食べる喜び」とは違う、と感じていました。

「どうにかして、もう一度食べる喜びを取り戻させたい」

その一心で、県内で嚥下評価入院を実施している医療機関を探し始めました。

嚥下評価入院とは?

嚥下評価入院は、専門の医療機関で「安全に口から食べられるか」を評価する短期入院です。通常1週間ほどで、言語聴覚士や医師が中心となり、飲み込みの能力や安全性を確認します。

「できる・できない」を判定するだけでなく、本人と家族が安全に食べる方法を学び、生活に取り入れることが目的です。誤嚥のリスクがある場合でも、評価とサポート次第で口から摂れる可能性があります。

入院前に準備したこと

まず書籍やインターネットで情報を集めました。特に参考になったのが以下の2冊です。書籍を通じて「胃ろうでも、状態によっては再び口から摂取できる可能性がある」と知り、前向きに動けるようになりました。


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その後、県内で嚥下評価を行っている医療機関を調べ、外来予約を行いました。採血やレントゲンなどで体調を確認し、医師から説明を受けて入院日程を決めました。

入院中の体験と学び

入院先では、言語聴覚士さん・歯科衛生士さん・看護師さんがチームを組み、丁寧に評価してくれました。

嚥下造影検査・経鼻内視鏡検査で喉の動きと飲み込みの状態を確認し、濃度や形状を変えた食材で安全に飲み込める条件をチェック。担当スタッフへのレポートも共有してもらい、退院後も安心して介助できる体制を整えてもらえました。

面会の際には、家族として実際のケア方法も学べました。姿勢の整え方、スプーンの角度、一口量の調整、とろみの濃さの確認——自己流では難しいことを、専門的に教わることができました。

その結果、「完全な食事は難しいものの、お楽しみ程度の経口摂取なら可能」という診断をいただきました。

とろみ剤とスプーン選び

入院中にすすめられたのが、とろみ剤の使用です。退院後も、病院で使っていたキッセイ薬品工業のスルーソフトQを使用しています。

飲み物によって濃度が変わること、時間が経つととろみが弱まることがあり、口に運ぶ前にしっかり混ぜることが大切です。混ぜが不十分だとむせてしまい、体調を崩すこともあります。


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スプーン選びも重要でした。入院中に試したのは、操作しやすく量の調整がしやすいWillassist K+スプーンと、柔らかく口当たりが良いシリコンスプーン(小サイズ)です。夫には柔らかいシリコンスプーンの方が合っていました。


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退院後の変化|10か月ぶりの「食べる喜び」

退院後、夫は1日1回だけ、お楽しみ経口摂取を始めました。

最初に口にしたのは、果物ジュースです。一口目を飲み込んだ瞬間、夫は目を閉じて味わいました。私も思わず涙があふれました。約10か月ぶりの「食べる喜び」は、家族にとってかけがえのない瞬間でした。

子どもたちと一緒にパパが好きそうな飲み物を買いに行く機会も増えました。「何が飲みたい?」と本人に聞いてみたり、同じ飲み物を用意して隣で一緒に飲んでみたり。ほんの少しでも同じ時間を共有できることに、以前にはなかった喜びを感じています。

食べる・飲むという行為は、単なる栄養補給ではなく、家族との時間やつながりにも関わっているのだと、あらためて実感しました。

食事介助と家族の関わり

現在は、医療・介護スタッフの方々が日常的な介助を担ってくださっています。家族としては、感謝の気持ちでいっぱいです。

面会のたびに食事介助のお手伝いをしています。子どもが一緒に来た日は、夫の表情がとても明るくなります。夏休みは子どもも介助を手伝ってくれることがあり、パパと同じジュースを飲む日もあります。家族で同じ味を共有できる楽しみが、少しずつ復活してきました。

ジュースのとろみで学んだ、誤嚥リスクと安全管理の重要性

経口摂取を始めた当初は、リンゴジュース・ぶどうジュース・オレンジジュースなど、いろいろな種類を準備していました。

しかしある日、私が食事介助に入ったとき、オレンジジュースのとろみがやや緩い状態でした。少し不安を感じつつも与えてしまい、夫は急変。看護師さんに吸引処置をしていただく事態となりました。

とろみの粉は同じ量でも、ジュースの種類(酸味や糖度)や置いた時間によって濃度が変わります。この経験から、水が最も安心できる飲み物だと実感しました。オレンジジュースの件の後、夫は1週間近く体調不良が続きました。

この経験を機に、夫の飲み物は水とリンゴジュースに限定することにしました。本人が希望する量だけ、安全を第一に少しずつ与えています。

✅ とろみの濃度はジュースの種類や時間で変わる
✅ 迷ったときは与えない判断も大切
✅ 急変時はすぐにスタッフへ声をかける

嚥下評価入院を検討している方へ

嚥下障害があると「無理をしない」という選択が多くなります。

でも、安全に評価・サポートを受けることで、口から摂取できる可能性が見えてくることがあります。家族も食事ケアを学べるため、その後の生活も変わります。

夫のような状態でも、可能性はゼロではありませんでした。

まず一度、主治医や担当スタッフに「嚥下評価入院を受けたい」と相談してみてください。新しい可能性を知るきっかけになると思います。

まとめ

胃ろう生活の中で口から食べることを諦めかけていた私たちが、嚥下評価入院を通じて少しずつ「食べる喜び」を取り戻せました。

量はわずかでも、同じ飲み物を家族で一緒に口にできる時間は、何にも代えられないものです。

同じように悩んでいる方に、この体験が少しでも希望のヒントになれば幸いです。

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