健康保険

【保存版】夫が働けなくなったときの制度まとめ|傷病手当金・障害年金の申請と健康保険の流れ

ある日突然、夫が倒れました。
病気は予期せず訪れ、家族の生活は一変します。

もし亡くなった場合は「遺族年金」、仕事中のケガなら「労災」など、比較的知られている制度がありますが、「病気で働けなくなったとき」に使える制度については、情報が限られていて、私自身とても困りました。

傷病手当金、障害年金など制度があるのは知っていても、どのタイミングで何を申請すればよいのか、役所に行っても「それは別の窓口です」とたらい回しにされることも多く、何度も足を運びました。

この記事では、私たち家族が実際に経験した流れとともに、病気や後遺症で働けなくなった配偶者を支えるために活用できる制度についてまとめています。

18歳未満の子どもを抱えながらの情報収集は本当に大変でした。
同じような状況にある方が、少しでも早く必要な支援にたどりつけるように、体験をもとに分かりやすくお伝えしていきます。

突然の病気やケガ…最初にやるべきこと

ある日突然、家族が倒れるーー
それは、心の準備も何もないまま訪れました。

夫は60代で2度目の急性心筋梗塞を起こし、救急搬送されました。1度目は50代の頃。今回の治療には、当時入れたステントの情報が必要だと主治医に言われましたが、家族の私はその内容を把握できていませんでした。

病状の把握と主治医の説明を受ける

緊急の場面でも、落ち着いて現在の病状と治療の見通しについて主治医の説明を受けることが大切です。

今回、幸いにも前回入院していた病院から診療情報提供書をいただくことができ、主治医に必要な情報を渡せたことでスムーズな治療につながりました。

ここで強く感じたのは、いざという時のために

  • 配偶者の既往歴
  • 入院した医療機関名と入院期間
  • 可能であれば当時の主治医の名前

などを、家族として事前に控えておくことの大切さです。これだけで、命をつなぐための医療判断が大きく変わる可能性があります。

「診断書」の取り扱いに注意!今後の申請に必要です

入院が落ち着いた後に必要となるのが「診断書」です。

我が家では、1ヶ月以内に2つの病院に入院することとなり、「高額療養費制度」の手続きにこの診断書が役立ちました。

特に覚えておいてほしいのは、「多数該当」という扱いです。
これは、過去12ヶ月以内に3回以上高額な医療費がかかった場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに軽くなるという制度です。

転院先でも、前の病院での入院期間がわかる診断書があったため、限度額適用認定証の多数該当に該当し、窓口での支払いが軽減されました。

💡 ポイント:診断書は必ずコピーを取っておきましょう!
後から複数の制度申請で必要になるケースがあります。

会社への連絡と有給・休職制度の確認

会社員である夫の場合、早めに会社への連絡が必要でした。

夫は有給をすでに使い切っており、休職扱いとなりました。
1年6ヶ月の傷病手当金の受給を終えても復職の見通しが立たなかったため、最終的には自己都合退職となりましたが、会社には誠実に対応していただけたことに感謝しています。

傷病手当金の申請も、毎月必要な作業です。

  • 【1枚目・2枚目】本人または家族が記入
  • 【4枚目】担当医の証明が必要

私が家族として行っていたのは、月初めに前月分の証明を主治医にお願いすることでした。1週間〜10日ほどで発行されることが多かったですが、1度だけ月末まで忘れられていたことがあり、その月は手当の支給が1ヶ月遅れとなりました。

その経験から、「毎月月初に忘れず依頼する」「10日過ぎて連絡がない場合は問合せする」ことを徹底するようになりました。

💡 傷病手当金の証明が遅れると、その月の収入がゼロになることも。
経済的な不安を少しでも減らせるように、できることから早めに動いておくと安心です。

この段階では、まだまだ気が張っているかもしれません。
でも、後から振り返ると、「あの時にちゃんと控えておいてよかった」と思えることがたくさんあります。

ご家族が安心して療養できるよう、そしてあなた自身の心と生活が少しでも守られるように、小さなことからでも、ゆっくりと準備していけたらと思います。

会社員の家族が倒れたときに使える制度

1年半、給与の代わりになる【傷病手当金】

協会けんぽ加入・連続3日以上の休業で申請可能

傷病手当金は、病気やケガで仕事を休んだ場合、最大1年6ヶ月のあいだ、給与の約3分の2にあたる金額が支給される制度です。会社員(被保険者)が【協会けんぽ】に加入していて、連続して3日以上働けなかった場合が対象になります。

金額と支給期間の仕組み

基本的な計算式は以下のとおりです。

支給額 = 標準報酬日額 × 2/3 × 支給日数
ただし、「直近1年間の平均報酬額」が基準です。

しかし、加入期間が1年未満の場合は要注意。
以下のどちらか低い方が適用されます。

  • 資格取得後の平均報酬額
  • 協会けんぽ全体の被保険者の平均額

わたしたちのケースでは、夫が転職して1年未満だったため、全国平均の低い方で計算され、支給額が大幅に少なくなってしまいました。

支給額と医療費、現実は赤字続き…

受給額の一例をご紹介します(多少ぼかしています)。

傷病手当金医療費合計
1ヶ月目約24万円約29万円
2ヶ月目約20万円約33万円
3ヶ月目約20万円約30万円
4ヶ月目約20万円約18万円

当初は限度額適用認定証の【区分ア】で自己負担が多く、3ヶ月連続で25万円超の医療費が必要でした。高額療養費制度を使っても、実際に戻ってくるのは申請から約3ヶ月後。しばらくは自己負担が重く、生活費が足りず困る状況でした。

【対処法】前職の保険加入記録を“別添”で申請!

あきらめずに協会けんぽへ何度も問い合わせた結果、「前職も協会けんぽ加入なら合算できる可能性がある」と教えていただきました。

そこで提出したのが「別添(べってん)」という書類です。

  • 加入していた支部名
  • 被保険者証の記号・番号
  • 資格取得年月日 などを記入

結果、前職と合算して1年以上と認められ、支給額が約3倍に増額! 過去4ヶ月分もまとめて追加支給されました。

でも3ヶ月後、また減額…? → 問い合わせて解決!

増額に安心したのもつかの間、3ヶ月後に再び支給額が3分の1に減ってしまいました。問い合わせると「機械処理のミス」だったとのこと。改めて差額が支給され、ホッとしました。

備えとして“保険証のコピー”を保存しておこう

転職後1年未満で倒れた場合、支給額が少なくなる可能性があります。
でも、前職も協会けんぽ加入なら、記録を合算できるかもしれません。

事前にできる備えとして:

  • 過去の保険証の画像やコピーを保存しておく
  • 別添の存在を知っておく
  • 困ったら協会けんぽへ直接問い合わせる

「どうしよう、医療費が払えない…」という不安が少しでも軽くなりますように。

休職後も復職できない場合は【障害年金】

傷病手当金の支給期間(最長1年6ヶ月)が終了しても、病気やけがの症状が改善せず働くことが難しい場合は、「障害年金」を検討できます。

会社を退職していても、初診日に厚生年金に加入していれば障害厚生年金の対象になるため、今後の生活の支えになります。

初診日の重要性と等級の目安

障害年金では、まず「初診日」がとても大切です。
これは、病気やけがで初めて病院を受診した日のこと。

この日に厚生年金に加入していたかどうかで、受け取れる年金の種類(障害基礎年金・障害厚生年金)が変わります。

さらに、障害の状態に応じて1級・2級・3級の等級が決まり、等級ごとに支給額も異なります。

診断書・病歴就労状況等申立書の準備がカギ

障害年金の申請では、医師の診断書だけでなく、本人or家族が代筆する「病歴・就労状況等申立書」の内容も大きく影響します。

  • 日常生活でどのような不自由があるか
  • 通院頻度や服薬の状況
  • 働けない理由や生活上の困難 など

主治医と相談しながら丁寧に準備することが大切です。

我が家の体験談はこちら

夫が傷病手当金の支給終了後も復職できず、障害年金の申請を決意したときの実体験を、別記事にまとめています。

「どうやって初診日を証明したの?」「診断書はいつ誰に依頼したの?」「申立書って何を書けばいいの?」といった疑問にお答えできる内容になっていますので、よければ参考にしてみてください。

関連体験談はこちら

障害年金を申請した体験談|症状固定から最短6ヶ月での申請までの流れ

申請してよかった!障害年金と一緒に受け取れた支援給付金

任意継続と国保、どちらが安い?

夫が退職したあと、すぐに悩んだのが「健康保険をどうするか」でした。

会社員を辞めた後は、一般的に2つの選択肢があります。

任意継続の制度と2年間の上限

1つ目は、これまで加入していた協会けんぽの「任意継続被保険者制度」を使う方法。
退職後も最長2年間、会社の健康保険を継続できます。ただし、これまで会社が負担してくれていた保険料の事業主負担分も自己負担になるため、保険料はおおむね2倍になります。

我が家では、退職後も夫の療養が続いていたため、慌てて任意継続を選びました。
なぜなら、病院の変更や制度の切り替えに不安があったからです。健康保険証を変えずに済むという安心感がありました。

保険料を比較して選ぶコツ

でも、いざ保険料の請求が届いてみると…
高い!毎月この金額を払うのはムリ…」と正直、驚きました。

我が家は子どもが2人いて、家計は傷病手当金とパート収入でなんとか支えている状態。
改めて、国民健康保険(国保)との比較をすることにしました。

市役所で保険料の概算を教えてもらったところ、任意継続よりも月額で数万円も安くなることがわかりました。早速、国保に切り替える手続きを行いました。

切り替えには事前準備が必要です。市区町村によって必要書類が異なることもあるので、事前に電話で確認しておくとスムーズです。

なお、任意継続は一度やめると再加入できません。切り替え時期とメリット・デメリットをよく比較した上で判断することが大切です。

関連体験談はこちら
任意継続から国保へ変更して保険料が減額された体験談

一歩ずつ、制度を味方に|安心して暮らしを立て直すために

病気やけがで家族が働けなくなったとき、先の見えない不安に押しつぶされそうになることもあると思います。

でも、ひとつずつ順を追って申請すれば、きちんと支援を受けられる制度がある——
そのことを、わたしたちは実際に体験して知ることができました。

制度を調べるのも、書類をそろえるのも、本当に大変なこと。
だからこそ、「必要なときに、すぐ読み返せる」ように、このページをぜひブックマークしておいてください。

あなたとご家族が、少しでも安心して療養と生活の両立ができるように。
この体験と情報が、未来の誰かの支えになれたらうれしいです。