ある日突然、夫が倒れました。
病気は予期せず訪れ、家族の生活は一変します。
もし亡くなった場合は「遺族年金」、仕事中のケガなら「労災」など、比較的知られている制度がありますが、「病気で働けなくなったとき」に使える制度については、情報が限られていて、私自身とても困りました。
傷病手当金、障害年金など制度があるのは知っていても、どのタイミングで何を申請すればよいのか、役所に行っても「それは別の窓口です」とたらい回しにされることも多く、何度も足を運びました。
この体験をもとに「夫が働けない状況」で実際に使えた制度と、申請の流れ、注意点をまとめました。
✅ 傷病手当金や障害年金をどのように申請したか
✅ 健康保険の継続や切り替えで負担を軽くする方法
✅ 子育て世帯として活用できた支援制度
✅ それぞれの制度をどの順番で利用していったか
いざというときに備えて、制度という選択肢を持っておけるようにしておきたいと感じました。
この記録が、同じような状況に置かれた方にとって、少しでも参考になればうれしく思います。
目次
夫が急に働けなくなったとき、最初に確認したこと
ある日、夫が出勤先で突然倒れました。
救急搬送され、診断は「急性心筋梗塞」。そのままICU(集中治療室)に運ばれました。
医師から説明を受けたとき、「命はとりとめたものの、今後の回復には長い時間がかかるかもしれません」と告げられました。
病名の重さに動揺しながらも、私はすぐに現実的な不安に直面することになります。
それは、夫の収入が止まることでした。
緊急入院からICUまでの流れ
夫はその日のうちにカテーテル治療を受け、ICUで経過を見守る状態になりました。
人工呼吸器や点滴など、多くの医療機器に囲まれ、面会も制限される中で、私は一人、自宅で子どもたちの世話をしながら情報を集めることになりました。
「これから生活費はどうなるんだろう」
「治療費はどれくらいかかるのか」
「働けない期間、会社の制度で何か保障されるのか」
不安が押し寄せる中でも、「まず今、自分にできることを知っておかなくては」と思い直し、情報収集を始めました。
会社への連絡と、収入が止まることへの不安
幸い、夫の勤務先は健康保険組合に加入している企業でした。
しかし、病気やケガで長期休職になったときの収入保障がどうなるか、私はよく分かっていませんでした。
有給休暇や欠勤扱い、傷病手当金の存在など、ネット検索で情報をかき集めながら、会社の総務担当者に連絡し、状況を伝えました。
会社側からは「まずは有休消化ののち、健康保険組合から傷病手当金の申請ができる」と説明を受け、手続きの準備を始めました。
最初に調べた「使えるかもしれない制度」
当時の私は、以下のような制度の名前を検索していました。
- 傷病手当金(健康保険による収入補填制度)
- 高額療養費制度(医療費の自己負担を抑える制度)
- 障害年金(もし長期的に働けなくなったら…)
- 任意継続や国民健康保険(退職後の保険切り替え)
- 特別障害者手当や介護保険など(介護が必要になるケース)
調べていくうちに、「制度は同時に申請できるものもあるが、時期や条件によっては適用されないこともある」とわかってきました。
とくに、申請の順番やタイミングが、支給可否や負担額に大きく影響することをこの時初めて知りました。
「制度がある」ことは知っていても、“自分に当てはまるか”を調べて行動することの難しさを痛感した出来事でした。
けれども、ひとつひとつ理解して動いたことで、実際に使えた制度や得られた支援も多くありました。
この体験が、同じように家族の突然の病気に向き合う方の参考になればと願っています。
次の章では、傷病手当金の支給額が思ったより少なかった理由と、満額支給を受けるために行った手続きについて具体的に紹介します。
傷病手当金の申請方法と支給額が増えた理由
夫が働けなくなったあと、まず申請を進めたのが「傷病手当金」でした。
これは、会社員が病気やケガで働けない期間に、健康保険から一定の金額が支給される制度です。
すぐに会社から申請用紙を受け取り、医師の意見欄と事業主欄を埋めて提出しました。
しかし、待っていた支給額は、想像よりもかなり少ないものでした。
初回の支給額が少なかった理由とは?
支給通知を受け取ったとき、「あれ?こんなに少ないの?」と正直驚きました。
理由を調べたところ、夫が転職後1年未満で倒れたことが影響していました。
傷病手当金の支給額は、過去12か月間の標準報酬月額の平均をもとに算出されます。
でも、転職してまだ数ヶ月しか経っていなかった夫の場合、計算対象が「現在の勤務先での給与だけ」に限られてしまっていたのです。
そのため、実際の収入よりもかなり低い支給額になっていたことがわかりました。
前職の健康保険加入期間を合算して再申請
このままでは困ると思い、健康保険組合に相談したところ、前職でも同じ「協会けんぽ」に加入していた場合、加入期間を合算して平均報酬を再計算してもらえる可能性があると教えてもらいました。
当時の夫も、転職前の会社で協会けんぽに加入していました。
そのため、私は以下の対応を取りました:
- 前職の保険証のコピーを用意
- 前職での退職年月や給与明細などの資料も準備
- 申請書に「別添あり」と記載し、説明文を添えた手紙を同封
これらを揃えて再度提出したことで、「前職から継続して被保険者だった」と認められ、支給額が再計算されることになりました。
「別添書類」の提出が増額につながった
提出から数週間後、再計算された支給額が通知されました。
当初よりも大幅に支給額が増えていたのです。
結果として、最初の数か月分に差額の振込もあり、家計としては本当に助かりました。
当時の対応を振り返ると、ポイントは次の3つです。
✅ 加入していた健康保険が同じかどうかを確認
✅ 資料(保険証コピーや退職証明)を用意する
✅ 別添資料として、手紙で状況を補足する
この「別添提出」は、制度の正確な運用を受けるためにとても有効でした。
あきらめずに確認・相談することの大切さを実感した手続きでした。
次の章では、夫の状態が「症状固定」と診断されたあとの手続きである、障害年金と身体障害者手帳の申請について詳しくお伝えします。
健康保険の切り替えで保険料を軽減できた話
夫が会社を退職することになったとき、次に考えたのが健康保険の切り替えでした。
この選択ひとつで、家計に大きく影響することになります。
任意継続か?国民健康保険か?悩んだ選択
退職後の健康保険には、次の2つの選択肢がありました。
- 任意継続被保険者制度(協会けんぽの継続)
- 市区町村の国民健康保険に切り替える
どちらにもメリット・デメリットがあります。
任意継続では、会社負担分を含めた保険料(全額自己負担)になりますが、高収入時の標準報酬月額に基づいた高い保険料のまま継続されるケースが多くなります。
一方、国民健康保険では、前年の所得に応じた保険料が決まります。
退職により収入が大きく下がった場合、こちらの方が負担が軽くなる可能性があります。
保険料シミュレーションで大きな差が出た
実際に、役所の窓口で「今後の見込み収入」をもとに国保の保険料を試算してもらったところ、任意継続と比べて年間10万円以上の差が出ることがわかりました。
当時の夫の収入はゼロに近く、私自身もパート勤務のみ。
所得ベースで計算される国民健康保険の方が、圧倒的に家計には優しいと判断しました。
また、自治体によっては、低所得世帯に対する減免制度もあるため、状況に応じてさらに軽減される可能性もあります。
最終的に国民健康保険に切り替えた理由
任意継続の保険料は、月々の固定費として大きな負担に感じました。退職後の収入が減る中で、家計に占める割合が増えていくことに不安もありました。
任意継続被保険者制度は、最長で2年間まで加入できる仕組みですが、原則として加入者本人の希望だけでは途中でやめることができません。ただし、国民健康保険や被扶養者など、他の健康保険制度に加入した場合には、中途で任意継続を終了することが可能です。
私たちは、保険料の金額だけでなく、今後の生活設計や収入の見通しをふまえ、より柔軟性のある保険制度を選びたいと考えました。任意継続は保険料が一定である一方、国民健康保険は所得に応じて保険料が変動します。その点が、退職後の我が家には合っていました。
実際に市役所で保険の切り替え手続きを行い、国民健康保険への加入が完了しました。切り替え後の医療費の自己負担にも大きな変化はなく、経済的にも精神的にも、私たちにとっては納得のいく選択でした。
健康保険の選択は、「どちらが得か」という一面だけでなく、生活全体を見通して判断することが大切だと感じています。
次の章では、「症状固定」と診断されたあとに進めた障害年金や身体障害者手帳の申請手続きについて、実際に経験した流れや注意点をお伝えします。
障害年金と身体障害者手帳を同時に申請したときの流れ
夫の容体が安定し、「症状固定」と診断された頃、次に動いたのが障害年金と身体障害者手帳の申請でした。
収入が断たれたままの状況で、生活費や医療費の支えになる制度を早く利用したいという気持ちと同時に、「自分で申請できるのか」という不安もありました。
主治医に診断書を依頼したタイミングと待ち時間
障害年金の申請に必要な書類の中でも、もっとも重要なのが「症状固定後に作成された診断書」です。
我が家では、回復期リハビリ病院への転院が決まったタイミングで主治医に診断書の作成を依頼しました。このとき、すでに「これ以上の大きな回復は見込めない」と医師から説明を受けており、症状が固定されたと判断できる時期でした。
しかし、診断書の受け取りまでには想像以上に時間がかかりました。依頼してから実際に受け取るまで、約2か月を要しました。病院側の書類作成の順番や医師のスケジュールの都合により、申請準備が思うように進まなかったことを覚えています。
他の方の体験談でも、診断書の完成までに1か月から2か月以上かかるケースは珍しくないようです。そのため、症状固定と判断された時点でできるだけ早く依頼することが、障害年金の申請をスムーズに進めるための大切なポイントだと実感しました。
障害年金と身体障害者手帳、それぞれの窓口と申請手続き
障害年金と身体障害者手帳は、どちらも障害の程度に応じて支援を受けるための重要な制度ですが、運用している機関や手続きの流れは異なります。
- 障害年金:年金事務所が窓口となります。
- 身体障害者手帳:市区町村の障害福祉窓口が担当します。
診断書の内容によっては、両方の制度で同じ診断書を使える場合があります。そのため、準備が整い次第、同時に申請を進めることが望ましいと感じました。書類の内容や提出先が異なることから、個別に確認を取りながら並行して進めると、時間のロスを防げます。
私たちの場合は、まず市役所の障害福祉課で手帳申請に必要な内容を確認しつつ、同時に年金事務所にも電話で相談と予約を入れました。スケジュールが重ならないように調整しながら動いた結果、ほぼ同時期に両方の申請を完了することができました。
申請時期を遅らせないためにも、「どちらかを先に」ではなく、「どちらも早めに準備する」ことが大切だと実感しています。
年金事務所の予約が取れず、申請準備でも苦労した経験
障害年金を申請するには、あらかじめ年金事務所の窓口で予約を取る必要があります。しかし、私が申請を進めようとしたタイミングでは、1か月先まで予約が埋まっていて、すぐに手続きに進めない状況でした。
当時、夫は入院中で外出ができなかったため、私が代理人として申請を進めることになりました。年金事務所に電話で確認すると、「代理申請は可能」とのことだったので、なんとか予約を取り、私一人で年金事務所に向かいました。
障害年金の申請で求められた主な書類
年金の申請には、以下のような多くの書類や証明書が必要でした:
- 診断書(障害年金用)
症状固定後に主治医が作成したもの。障害の程度や日常生活の影響を詳細に記載してもらいます。 - 初診日の証明(受診状況等証明書)
どの病院で最初に診てもらったかを証明する書類。夫の場合は、救急搬送された病院が初診だったため、スムーズに特定できました。 - 被保険者期間の確認書類
障害年金を申請するには、保険料の納付状況や加入期間が一定の条件を満たしている必要があります。これらの情報は、原則として年金事務所側で確認されます。
病歴・就労状況等申立書(本人または代理人が記入)
発症から現在までの症状の変化や、日常生活・就労の影響について詳細に記載する必要があります。
申立書の作成で苦労したこと
夫が自分で記入できる状態ではなかったため、私が代筆することになりました。
この「病歴・就労状況等申立書」は、医師ではなく本人の視点で記入する書類です。時系列で書く必要があり、記憶が曖昧な部分もあったため、以下のものを参考にしながらまとめました。
- 入院中のメモや記録
- 医師が作成した診断書のコピー
- 保険証の履歴や診察券の記録
記載内容が不明確だと、年金の審査に影響が出る可能性があると聞き、慎重に丁寧に書き進めました。
このように、障害年金の申請準備は書類の多さだけでなく、内容の正確さが求められるため、早めに着手しておくことがとても重要です。
必要であれば、年金制度に詳しい社会保険労務士(社労士)に相談するのも一つの手段です。特に書類作成に不安がある方にとっては、心強いサポートになると感じました。
次の章では、介護保険制度と負担割合証の変更について、実際に体験した注意点をご紹介します。
介護保険の負担割合証が65歳で変わる理由と対処法
夫が65歳の誕生日を迎えた月、私たちは思わぬ通知を受け取りました。
「介護保険負担割合証」の内容が変わり、それまで1割負担だった自己負担が3割になるというものでした。
介護の必要度や収入が変わったわけではないのに、急に3倍の負担になることに驚きと不安を感じました。
「65歳の誕生日」で変わる自己負担の仕組み
介護保険制度では、65歳の誕生日を迎える月に、介護保険負担割合証が新たに交付されます。
このとき、世帯の所得や課税状況に応じて、
- 1割負担
- 2割負担
- 3割負担
のいずれかに決定されます。
注意すべき点は、本人だけでなく世帯全体の所得が基準になるということ。
私たちの場合も、同一世帯の私の収入が反映され、3割負担となったことがわかりました。
3割負担になってしまった背景
夫は重度の障がいが残り、要介護状態でした。
それでも、介護サービスの自己負担が3倍になるとなれば、家計への影響は非常に大きくなります。
調べてみると、「介護サービス費の高額介護サービス費制度」や「市区町村の独自軽減制度」があることがわかりました。
ただし、自動的に軽減されるわけではなく、申請が必要という点には注意が必要です。
市役所で手続きして軽減できた方法
さっそく、市役所の介護保険課に相談に行きました。
夫の障害者手帳や年金の情報、医療費の負担状況などを伝えたところ、以下の制度を案内されました。
- 高額介護サービス費制度(一定額を超えた分が払い戻される)
- 障害者等に対する介護保険料の軽減措置(対象者に該当すれば保険料そのものが軽減)
- 要介護者が非課税世帯の場合、独自助成制度が使える自治体もある
夫は要件を満たしていたため、申請を行うことで介護保険料が軽減されました。
結果として、介護サービスの利用を継続でき、経済的にも負担が抑えられたことに安心しました。
このように、65歳を境に制度が変わるポイントでは、何がどう変わるかを早めに確認することが大切です。
「負担が増えた」と感じたときには、あきらめずに市区町村に相談してみてください。
制度によっては、あとから払い戻しが受けられる場合もあります。
次章では、医療費の負担を軽くする高額療養費制度と限度額認定証の使い分けについて、私たちの体験をもとにお伝えします。
医療費を抑えるために使った限度額認定証と高額療養費制度
夫が急性心筋梗塞で救急搬送され、ICUから一般病棟へ――。入院が長期にわたると分かったとき、まず不安に感じたのが「医療費がどれほどかかるのか」ということでした。
すぐに限度額適用認定証の申請を行い、病院に提出しました。さらに、自己負担額が一定を超えた分が後日払い戻される高額療養費制度についても確認しておきました。
限度額認定証を使っても、毎月の医療費は30万円近くに
制度を利用すれば1ヶ月の自己負担額は「限度額」で済むと聞いて安心していたものの、実際の医療費の請求額は現実的に重くのしかかりました。
例えば、急性期病院での入院中は毎月の請求が約30万円。
限度額認定証を使っても、毎月「窓口で支払う医療費」としては30万円、30万円、30万円、4ヶ月目に23万円ほど。
退院後に高額療養費の払い戻しがあるとはいえ、毎月これだけの額をいったん立て替える必要があることに大きな衝撃を受けました。
「多数該当」が引き継がれず、負担額が軽減されなかった
3ヶ月間、限度額まで支払ったことで「多数該当」の条件を満たしていたはずなのに、4ヶ月目の病院(回復期病院)では反映されず、自己負担額は軽減されていませんでした。
理由は、病院が変わることで制度の引き継ぎがうまくされなかったこと。多数該当の扱いは「病院が違えば別枠」とみなされるケースがあり、事前確認が必要だったのです。
私たちのように、同じ健康保険に加入していても、病院が異なることで処理が分断されることがあるという点には注意が必要です。
医療費は制度だけでは抑えきれないこともある
限度額認定証や高額療養費制度はあくまで「保険診療の自己負担」を軽減するものであり、食事療養費、差額ベッド代、文書料、リネン代などの実費分は対象外です。
そのため、「限度額を超えたら戻ってくるから安心」と思っていても、実際に家計から出ていくお金は想像以上に大きくなる可能性があります。
対策としてやっておいてよかったこと
- 限度額認定証は早めに取得し、病院にすぐ提出した
- 医療費明細を毎月チェックして、次月以降の支払いに備えた
- 多数該当が適用されているか、病院や保険者に確認した
どれも当たり前のようで、実際に直面すると後手に回ってしまうことが多いポイントです。
この章では、制度を活用しても「すぐに楽になるわけではない」こと、現金の準備や払い戻しまでの期間に耐える工夫も必要であることを、実体験からお伝えしました。
次章では、子育て家庭として受けられた放課後児童クラブの減免制度など、医療費以外にも活用できた支援についてご紹介します。
子育て家庭に役立った放課後児童クラブの減免制度
夫が病気で働けなくなり、収入も大きく減った中で、次に気になったのが子どもたちの生活環境でした。
学校が終わったあと、放課後に安全に過ごせる場所として、わが家では放課後児童クラブ(学童)を利用していました。けれど、利用料が毎月かかるため、家計への影響も無視できません。
そんなとき、市区町村のホームページで見つけたのが「放課後児童クラブ利用料の減免制度」でした。
母親が「ひとり親扱い」で申請できたこと
夫は入院中で意思表示ができず、家計を支えるのは私ひとり。役所に相談したところ、事情を説明すれば「ひとり親相当」として申請できるとの回答をもらえました。
実際には、次のような説明をしました:
- 夫が長期療養中で就労できない状況にあること
- 所得が私の収入のみになっていること
- 児童扶養手当の受給証明があること(※対象外でも“参考資料”として添付)
自治体によって認定基準や表現は異なりますが、「家庭状況に配慮する柔軟な対応」が取られるケースも多く、諦めずに相談することが大切だと感じました。
所得証明や必要書類の提出でスムーズに手続きできた流れ
申請の際に提出した主な書類は次のとおりです:
- 本人と配偶者の所得証明書(または非課税証明)
- 現在の家族状況がわかる住民票
- 減免制度の申請書類(自治体指定の様式)
さらに、申請の裏付けとして「病気療養中であることを示す診断書」や「障害年金や特別障害者手当の受給通知」などを添えることで、事情が伝わりやすくなりました。
手続き後、利用料は月額数千円ほど減額され、子どもの居場所を確保しつつ、経済的な安心感にもつながりました。
他の子育て支援制度にも応用できるポイント
放課後児童クラブの減免制度で得た経験は、他の支援制度にも活用できました。特に次のような制度で応用できます:
- 就学援助制度(学用品や給食費の補助)
- 保育料の軽減措置(保育園・認定こども園など)
- 医療費助成(子どもの通院・入院費の助成)
いずれも「ひとり親相当」「特別な家庭状況」「所得の急減」といった背景がある場合、自治体の判断で支援を受けられる可能性があります。
そのためには、家庭の状況を正確に伝えること、申請書類をきちんと揃えることが大切です。
夫の病気で生活のすべてが一変した中でも、子どもたちの環境だけはなるべく変えたくないという思いが強くありました。
支援制度をうまく使えば、家庭としてのバランスを保ちつつ前に進む力にもなります。
次章では、制度全体を振り返りながら、優先すべき手続きや今できる備えについてまとめていきます。
制度の優先順位と、今からできる備えのすすめ
夫が突然倒れ、入院・療養生活が始まったとき、最も困ったのは「何をどの順番で手続きすればいいのか」が分からなかったことでした。焦ってあちこちの窓口に相談した結果、後戻りややり直しが必要になった場面もありました。
同じような状況に直面した方が少しでもスムーズに動けるよう、「順番にやるべきこと」リストと、実際に私たちが経験した制度の優先順位についてご紹介します。
最初に動くべきは「収入減の補填」
夫が働けなくなったとき、家計に直結するのが給与のストップです。入院中であっても、会社員であれば「傷病手当金」の申請をまず進めました。
ただし、転職後1年未満のため支給額が少なく、後から「前職の加入期間を合算」して増額できることが分かりました。最初の申請から見直しまでに約1ヶ月半ほどかかりました。
この経験から、まず優先すべき制度は以下の2つでした:
- 傷病手当金(すぐに申請できる)
- 高額療養費制度・限度額認定証(入院費がかさむ前に申請)
次に検討したのは「保険と障害年金」
傷病手当金でしのぎながら、夫の状態が「すぐには回復しない」と分かった段階で、障害年金と介護保険について調べ始めました。
障害年金や身体障害者手帳の申請は、「症状固定」と診断されてからでないと進められません。そのため、あらかじめ主治医と相談して時期を見極めることが必要です。
また、会社を退職する前後では保険の切り替えも必要になります。
- 任意継続か国民健康保険か、収入や扶養の状況でシミュレーション
- 65歳をまたぐタイミングでは「介護保険負担割合証」に注意
子育て世帯なら「ひとり親扱い」の制度も確認
私の場合は、夫の長期入院により実質的に「ひとり親家庭」として育児・生活の負担がのしかかりました。児童扶養手当の対象ではなかったものの、「放課後児童クラブの減免制度」など、子育て支援制度の申請は可能でした。
早めに市役所へ相談し、支援を受けられる制度を洗い出すことが有効でした。
制度は同時進行できないこともある
注意したいのは、制度によっては申請や審査を「待たなければいけない」タイミングがある点です。
たとえば:
- 障害年金の申請には「初診日」や「診断書作成のタイミング」が関係する
- 傷病手当金の支給中に退職・国保切り替えをする場合、保険者変更の申請手続きが必要
このように、制度ごとに「順番」や「調整」が必要であり、焦らず一歩ずつ進める姿勢が大切だと痛感しました。
実際に役立った制度と、かかった期間・申請先のまとめ
制度名 | 申請時期 | 審査・決定までの目安 | 申請先 |
---|---|---|---|
傷病手当金 | 発症1週間後に申請 | 約1ヶ月(再申請も含めて2ヶ月) | 在職中:会社経由/退職後:協会けんぽへ直接申請 |
限度額適用認定証 | 入院前に病院から協会けんぽへ申請を依頼 | 詳細な発行時期は不明(即時発行の可能性あり) | 各保険者(協会けんぽ・国保など) |
障害年金 | 症状固定後に申請 | 約6~7ヶ月(診断書の取得期間を含む) | 年金事務所 |
身体障害者手帳 | 医師の診断書取得後に申請 | 約6~7ヶ月(診断書の取得期間を含む) | 市役所(障がい福祉課など) |
介護保険(第2号被保険者) | 64歳で申請(特定疾病による第2号被保険者) | 申請から約1ヶ月で結果通知 | 市役所(介護保険課など) |
子育て支援(放課後児童クラブ減免) | 入会手続きと同時に減免書類を提出 | 約3ヶ月後に減免決定通知(4・5月分は6月以降に調整) | 市役所(子育て支援課・保育課など) |
※表に記載の期間や手続き内容は、実際に我が家で利用した際の目安です。お住まいの地域や状況により異なる場合があります。
補足ポイント
傷病手当金:勤務先に在職中は会社を通じて申請しますが、退職後は協会けんぽに直接提出します。申請書類は会社側の記載も必要なので、連携が不可欠です。
限度額適用認定証:加入している健康保険の種類(協会けんぽ、国保など)によって申請先が異なります。
障害年金:初診日の証明や診断書の準備に時間がかかるため、早めの準備が重要です。年金事務所への事前相談もおすすめです。
身体障害者手帳:必要な診断書を医療機関で取得し、市役所に提出します。
介護保険:65歳未満でも、特定疾病があれば申請可能でした。市区町村の窓口に相談するとスムーズに進めらると思います。
子育て支援(減免):入会時に収入状況や家庭状況を説明し、申請書類を提出しました。自治体によって手続き時期や制度の有無は異なります。
⚠ ご注意
上記は、あくまで我が家の場合に実際にかかった期間や流れをまとめたものです。
申請時期や審査期間は、自治体や加入している保険者、個別の事情等によって大きく異なる場合があります。
また、申請先や必要書類の詳細についても、変更や地域差があるため、必ず事前に各制度の公式窓口や自治体へ確認することをおすすめします。
【まとめ】制度は知って備えれば、味方になってくれる
ある日突然、夫が倒れて働けなくなった私たち家族。
収入が止まり、これからの生活に不安を感じるなかで、頼ることができたのは公的な支援制度でした。
制度はたくさんありますが、同時にすべてを申請できるわけではありません。
状況に合わせて優先順位をつけ、今できることから順番に進めることが大切だと実感しました。
今回ご紹介した制度の一部でも、皆さんのご家庭に役立つものがあれば幸いです。
✔ 傷病手当金や障害年金で収入減をカバー
✔ 健康保険の切り替えで負担を軽減
✔ 医療費・介護費・子育て支援で生活の下支えを確保
いざという時、制度の「引き出し」があるだけで判断に迷わずにすみます。
少しずつで大丈夫なので、ご自身やご家族の状況に照らして、使える制度を確認してみてくださいね。
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傷病手当金の支給額が増額された体験談はこちら | 転職後1年未満でも満額にできた手続き方法を詳しく解説 |
障害年金の申請の流れと注意点はこちら | 症状固定から申請までのリアルなタイムラインと失敗しないポイント |
介護保険の負担割合証が変わった体験談はこちら | 65歳で突然3割負担になった理由と手続きで軽減できた方法 |
限度額認定証と高額療養費の違いはこちらで解説 | 医療費を抑える2つの制度の違いと使い分けを実例で紹介 |
放課後児童クラブの減免制度についての記事はこちら | 子育て家庭で「ひとり親扱い」で申請できた内容を共有 |